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東京タワー(リリー・フランキー)

東京タワー(リリー・フランキー)_b0058285_8545651.jpg 最初に著者の名前を見たとき、素直に外人の女性だと思った。そんなわけで手にとって内容を吟味することもなかったのだが、評判を聞きつけて、娘が本を買ってきたので、何気なく読んで...泣いた。
 誰もが母親から生まれ、無償の愛を受け、そして誰もが、その愛に感謝しきれず悔やんでいる、そんな心のやわらかい部分を鋭く突いてくる内容だ。読む人は皆主人公を自分に重ね、「ああ、そういえば、小さいころお母さんにこんなことしてもらったなあ」とか「思春期のころ、ぶっきらぼうな口をきいて、心配させたなあ」と思い起こさせ、「そうだ、今度母親の好きなお菓子でも持って顔でも見に行こうかな」と暖かい気持ちにさせてくれる。
 前半の舞台、北九州は僕の母の実家があった地でもあり、何度か訪れたことがあるので、本に出てくるエピソードも面白かった。夏休みに遊びにいくと、祖母が毎日10円の小遣いをくれ、僕はそれを握り締めて近所の駄菓子屋でくじをひく。ろくなものが当たらないのだが、毎日わくわくして駄菓子屋通いしたことを、ふっと思い出した。
 大学生のときに遊びに行ったときは、羽振りの良かった母の上の兄は、繁華街を何軒もはしごして豪勢に遊ばせてくれたし、慎ましくやっていた下の兄は、近所の居酒屋に連れて行ってくれ、なじみ客全員に僕を紹介してくれた。
 こんな人間関係がもしかしたら著者を育んだ環境なのかもしれない。その濃密な人間関係のなかに、この不思議な家族は存在したのだとしたら、そんなに違和感を感じない。
 ところでこの本を通勤途中で読んではいけない。涙が止まらず恥ずかしい思いをする。
by scott_yonezawa | 2006-02-04 09:01 | 趣味(読書)