カテゴリ:趣味(読書)( 29 )

b0058285_112013.jpg 銀座で稼いだ金を首からぶら下げて、青年は「ジャズ・カントリー」に旅立った。言葉、文化、食べ物、差別。タフでハードなアメリカの日々。そして、すばらしい仲間との出会いと情熱的な恋。内省と感傷と爆笑と希望に満ちた、ジャズ青年のビルドゥングス・ロマン。 (amazon.com)

 週刊文春の書評に、「南博」という、聞き覚えのある名前の著者が書いた本の書評が出ていた。副題に「ジャズピアニスト・エレジー・アメリカ編」とある。1960年生まれ、うーん、中学の同級生で出鱈目にピアノのうまかった南博君という友人がいたが、偶然かなあ。内容も面白そうだしまずは読んでみよう。
 早速購入して、読み始めるとこれが止まらない。1988年12月、ちょうど僕がニューヨークに着任したのと同じ年、南博はボストンに降り立ってジャズ修行を始める。英語が伝わらないエピソードなど、同じ苦労をしたので、わかるわかる。
 でも彼は、銀行口座を作るのも、アパートを借りるのも、ガスの修理を頼むのも、とにかくすべて一人で立ち向かうのだ。僕ら駐在員は、アメリカ生活のハウツーは秘伝の引継書類に残されているし、一通りの生活基盤を整えるのに、会社が最大限の支援をしてくれる。銀行口座なんて、にこやかな(作り笑いだが)窓口嬢が待ち構えていて、あっという間に準備してくれる。
 この本を読んでいるとジャズを勉強したい、という彼の意思の強さがすべてのことを乗り越える、いや辛い体験さえ糧としてしまう原動力になっていることが伝わってくる。

b0058285_1120222.jpg 時代はバブルのまっただ中、80年代後半。場所は日本一の歓楽街、銀座の高級クラブ。ジャズ・ピアニストを目指す南青年は、ひょんなことから銀座の高級クラブ二軒のピアニストを掛け持ちすることになった。海千山千のバンドマンたち。クラブのマネージャーやバーテンダー、ポーターたち。艶やかなママ、チイママ、ホステスたち。そして「ある組織」の方々をはじめとするお客たち...。そしてある日、南青年はアメリカへのジャズ留学を決心する。「優しいんだか厳しいんだか、意地悪なんだかよくわかんない人達の中で、僕はピアノを弾いていたのであった。今から考えれば、いい時代をすごさせてもらったと思う。でもやっぱり僕は、本物のジャズにあこがれを抱いていた」 ジャズ・ピアニストが綴る、笑いと感動の自伝的長編エッセイ。(amazon.com)

 「鍵盤上のU.S.A.」で盛んに「銀座のクラブでピアノを弾いて稼いだ」話が出てくる。この本は銀座時代を語った本で、いわば前篇にあたる。まだ半分ほど読んだところだが、イントロでの「その筋の親分」のエピソードなど抱腹絶倒、つかみはOK、だ。
 ところで表紙の写真を見たら、ジャズピアニスト南博は、やはり同級生の南君だった。当時はクラシックを語っていたように記憶しているが、そんな彼がいかにジャズに目覚めたかも、この本に詳しい。
 いつか機会があったら彼のライブに行ってみたい。著作の文章のような軽妙なトークを聞かせてくれたら最高なんだが、それじゃ谷村新司やさだまさしのコンサートになってしまうか。
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by scott_yonezawa | 2009-06-13 11:20 | 趣味(読書)
b0058285_1283888.jpg 酒井さんの著作は、どれも語り口が優しく、向上心を持って勉強しようとする後進たちを暖かく応援するかのようだ。今回の英語学習法も、「英語を話すもうひとりの自分(アルターエゴ)」という、おやっと思わせる新鮮な切り口で、読者の興味をぐっと掴む。
 次に1000の単語のボキャブラリービルディングを、単語の定義をヒトリゴトの英語で行う勉強法で、読者に新鮮な驚きを与える。こんな勉強法、いままでにあっただろうか?さらに英語の演説を、台本の内容語を意識しながら聞く方法も、たくさんヒアリングすれば自然に「英語耳」ができるというあやふやな理論に比べ、はるかに実戦的だ。
 卑近な例で恐縮だが、僕自身自分の拙い単語力で如何に正しく伝えるか、相手が理解するまでいろんな言い回しでチャレンジするし、何を言っているのかよくわからない相手の言いたいことを、会話の中のキーワード(内容語!)から類推して話をつなげるなど、まるで頭の体操のようなことを繰り返している。質問を投げかける直前など、頭の中で数とおりの質問文を作ってどれが通じやすそうか考えたりもする。しかも「僕は英語をしゃべっているんだよ」とばかりに、身振り手振りもなるべく欧米人ぽく振舞う演技つきでだ。これって実は酒井さんが提唱する学習方法に通じるのではないだろうか。もちろん酒井さんの学習法は論理的で体系化されているが、氏の経験に裏打ちされたものを感じる。
 もう遠回りをしなくても、モチベーションを持ち続けて英語に取り組め、成果をあげることができる。そんな学習法がここに書かれている。
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by scott_yonezawa | 2008-11-09 12:06 | 趣味(読書)
b0058285_10381755.jpg 勝間さんの名前を見ない日はないが、著書を読むのはこれが初めてだ。「年収10倍アップ」云々というタイトルの本もあるのだが、内容以前に、なんだか胡散臭い感じがして敬遠していた。
 それでも食わず嫌いにならないよう、書店で何冊かパラパラとめくってみたところ、この本にピンときた。タイトルも「効率が10倍」で「年収10倍」より謙虚だ。本当に10倍効率があがるかはさておき、知的生産に役立つと思われる方法について、自分が実践し成果があったと感じた方法について書いている。
 その成果も中途半端なものではなく、最年少で公認会計士合格、中小企業診断士に一発合格、TOEICも3年間で倍以上の900点に向上と、輝かしい実績だ。子飼弾氏が著書「弾言」のなかで、「なぜ勝間和代さんの本が売れるかといえば、いいことが書いてあるからじゃないんです。それが実体験に基づいているからなんです。」と喝破しているとおり、良いと思うノウハウを惜しげもなく公開しているところがミソだろう。提案されている事柄が具体的で大変参考になった。僕も早速G-Mailの活用など取り入れさせてもらっている。
 もっとも相当求道的な部分もある。知的生産性向上のために、運動や食事、飲酒にまで気を配るところは、自分を最善の状態に保つために必要だとのことで、そこまで言及すること自体目新しいが、やはり難しい。僕はお酒はやめられないなあ。
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by scott_yonezawa | 2008-10-19 10:38 | 趣味(読書)
b0058285_226426.jpg 恥ずかしいことに今まで城山三郎の本を読んだことがなかった。正確には氏が翻訳した「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」がかろうじて氏の仕事に触れた経験だろうか。
 ある日、本屋でタイトルにひかれてこの本を手に取った。そして最初の数ページを読んで、本を置くことができなくなってしまった。
 奥様とのドラマのような偶然の出会いと再会、下積み時代共にした苦楽、取材旅行や待ち合わせのレストランでの思い出、これらのエピソードが氏と奥様との絆の強さ、愛の深さを際立たせる。そんな幸福な日常の中で奥様の癌がわかる。
 病気を知っても、ご主人を心配させないよう、努めて明るくふるまう奥様の描写に、不覚にも涙がこぼれた。立ち読みで目を赤くし、ズルズルと鼻をすすっている中年オヤジに、周囲はかなり引いていたにちがいない。
 奥様が他界したことを一瞬忘れ、声をかけたあと「そうか、もう君はいないのか」とつぶやく。『五十億の中でただ一人「おい」と呼べる存在』を失う喪失感に大きさに呆然と立ちすくむ氏の姿がありありと描かれ辛い。
 出版社や本屋には申し訳ないが最後まで読んでしまった。ただ、誠実で筋の通った氏の生きざまに強く惹かれ、遅ればせながら「総会屋錦城」から順番に読んでいるので、立ち読みの不躾をお許し願いたい。
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by scott_yonezawa | 2008-06-30 22:06 | 趣味(読書)
b0058285_21252617.jpg 本土出身記者、40年の体験から綴る沖縄論。筑紫哲也氏、激賞! 本当の沖縄の姿は、青い海、癒しの島といった文脈だけでは語れない。「基地に虐げられた歴史」からだけでも見えてこない。
本書では本土出身記者40年の体験から、ガイドブックや全国紙には載らない、沖縄のリアルワールドを描き出す。 (amazon.co.jp)
 僕と沖縄の個人的な関係は、1983年に旅行したことぐらいで、取り立てて特別なことはない。そのほかには小学生の頃本土復帰のニュースで、自動車が一晩で右側通行から左側通行に切り替わると聞いて、なんだか大変そうだなあと感じたくらいだろうか。通行が逆になるに伴い、標識や看板の向きを変えるのが大変だという解説に妙に感心した覚えがある。
 この本には、戦後の米軍占領当時から本土復帰を経た現在までの沖縄の状況が、著者の実体験を下につぶさに書かれている。基地問題を政治問題だけでなく経済問題として捉えている点には冷静な視点を感じた。また沖縄の人々が持つ南国のリズムへの著者の暖かいまなざしに、心から沖縄を愛する気持ちが伝わる。本土の人が沖縄の人のリズムを学べば、スローライフな望ましい日本になれそうな気がする。久しぶりにまた沖縄を訪問したくなった。
 ところでこの本との出会いは、著者のご子息と交流から生まれた。彼との出会いについては、以前アップしたことがあるので、ぜひ読んでいただけたらと思う。
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by scott_yonezawa | 2008-04-03 21:25 | 趣味(読書)
b0058285_8545391.jpg 東城大学医学部付属病院では、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門チーム「チーム・バチスタ」を作り、次々に成功を収めていた。ところが今、三例続けて術中死が発生している。しかも次は、海外からのゲリラ少年兵士が患者ということもあり、マスコミの注目を集めている。そこで内部調査の役目を押し付けられたのが、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口と、厚生労働省の変人役人・白鳥だった……。 (amazon.co.jp)

 この小説の秀逸なところは、ミステリーとしての完成度の高さもさることながら、主人公ペアのコミカルとも思えるキャラクター設定と、医学に関する情報のリアリティーさのギャップにもあると思う。
 関係者への聞き取り調査を通じて登場人物の口から語られる大学病院やそこで働く医師が抱える問題の深刻さは、新聞などで読み聞くより苛烈なもののようだ。時代を反映した話題や心臓手術描写の正確さなど、ノンフィクション小説の切り口を持っている。
 一方、調査を進める白鳥、田口ペアの掛け合いや、白鳥の暴走気味のトークへの田口の心の中でのツッコミなど、思わずニヤニヤしてしまい、ある意味救いになっている。
 驚いたのは、白鳥のキャラクターが、奥田英朗の「イン・ザ・プール」に登場する伊良部医師に近いものを感じていたところ、文庫本の解説を書いている方が、まったく同じ分析をされていることだった。とてつもなく頭が良いのか、単なるオタクがかった変人なのか、予断を許さぬ言動の数々に振り回されるドライブ感が、案外心地よい。
 すでにこのペアが活躍する続編が出ているそうで、ぜひ読んでみたい。
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by scott_yonezawa | 2008-03-14 08:55 | 趣味(読書)
b0058285_2112671.jpg こんな仕事のしかた、あなたはどう思いますか?
・部下の失敗は、経営陣に報告しない。
・ 予算立案では、コストは多めに、売上は少なめに見積もる。
・ できるかぎり、すべての部下に高い評価を与える。
・ 課長は、部下の「成果」ではなく「モティベーション」を管理する。
・ できない社員にこそ時間をかけ、できる仕事を探してやらせるべきだ。
一見、ビジネスの常識に反するように思える項目もありますが、これらはすべて「デキる中間管理職の行動原則」です。(amazon.co.jp)

 この本の素晴しいところは、課長になった人が直面するであろう課題への対応はいくつ、すぐにでも身に着けるべき考え方はいくつ、と全体像を示し、その上で中身を平易な言葉で語っているところにある。まるで良く出来たプレゼンテーションを聞いているように読み進むことが出来、頭に入ってくる。
 理論を、著者の体験というフィルターを通して噛み砕いてくれているのだろう、内容も共感できることばかりだ。
 この本はすでに課長を務めている人には、自分の経験や培ってきた考え方を整理してくれる。課長になったばかりの人には、進むべき進路を示してくれる灯台の役目を果たしてくれるに違いない。
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by scott_yonezawa | 2008-02-27 21:12 | 趣味(読書)
b0058285_1215439.jpg 現代は、江戸から明治に匹敵する「時代の大きな変わり目」だ。ウェブという「学習の高速道路」によって、どんな職業の可能性がひらかれたのか。食べていけるだけのお金を稼ぎつつ、「好き」を貫いて知的に生きることは可能なのか。この混沌として面白い時代に、少しでも「見晴らしのいい場所」に立ち、より多くの自由を手にするために――。オプティミズムに貫かれ、リアリズムに裏打ちされた、待望の仕事論・人生論。『ウェブ進化論』完結篇。(amazon.co.jp)

 勤めていた企業の信用不安、合併とキャリアの危機に際し、多くの同僚が転職したのに、その一歩が踏み出せなかったことについて今でも振り返ることがある。本書でも指摘されているように、大企業で生きていくことを前向きに選択したのか、安逸な会社人生に慣らされた結果なのか。いずれにせよ40代後半になって振り返っても何も生まれない。むしろ大きな組織でいかに自分の得意分野を築いていくか、前向きに自分を動機付けたい。
 もっとも職場はすでに新たな時代の職業観に基づいて行動している方も多い。同僚には数度の転職の結果当社に来ている人も多く、自分を成長させる動機がなくなれば、次の職場へと躊躇なく転職していく人たちだ。
 WEBという新時代のツールが職業観に及ぼす影響について語られた内容は、いわゆる「大企業」の立場でも無視はできないと感じる。大きな組織やプロジェクトをとりまわせる人材の確保について、新入社員から育成するだけでなく、「学習の高速道路」を駆け抜けていく力量ある若手といかに組み、成果を上げていくか、旧来の組織に残ることを決めた人たちは、この点に注意する必要がありそうだ。
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by scott_yonezawa | 2008-02-13 12:16 | 趣味(読書)
b0058285_22311565.jpg 憎み合う労使。乗客からは罵声の嵐。三度めの倒産の危機。リストラに怯える日々…。こんなボロボロの会社を救おうと一人の男が立ちあがった。最低のエアラインから甦ったコンチネンタル航空の奇跡の復活劇。(amazon.co.jp)
 NED-WLTさんのブログで紹介されていた本、今回の出張中に読むつもりで購入した。著者のひとり、ゴードン・ベスーンのコンチネンタル航空再建をまとめたものだ。いわゆるビジネス書の一種なのだが、文章も平易、経営について難しい理論もなくとっつきやすい。
 顧客、従業員、取引先すべてがwin-winの関係になるべく、何を行うべきかマネジメントとしてはっきりとしたメッセージを発信すること、実現に向け目に見える形で実行することを説いている。
 コンチネンタルで具体的に何がなされたか、ぜひ一度読んでいただきたいが、マジックなど何ひとつない。プランを立て、実践する。特に会社がひとつのチームとして機能するため、従業員とのコミュニケーションの大切さが繰り返し書かれている。
 空港や機内で読みながら、目の前の航空会社と比較したり出来て面白さが倍増だった。
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by scott_yonezawa | 2008-01-02 22:31 | 趣味(読書)
b0058285_22115015.jpg 生来のはやりもの好きの血が騒ぐのが半分、「模倣犯」の続編と聞いて放っておけないのが半分で、この重たくて高い本を上下購入して読んだ。
 多くの人が言うように、ぐいぐいと読者を引き込む宮部さんの筆がつむぐストーリーに、いつの間にか引き込まれる。自分の中で、主人公である前畑滋子が、実在する人物かのように活躍し始める姿にどきどきする。
 プロフィールを読むと、宮部さんは同世代の方のようで、中年の域に差し掛かった前畑滋子やその亭主の夫婦関係も、等身大で伝わってくる。
b0058285_22144027.jpg 僕のこのストーリーへの個人的感想は差し控えるが、導入部で使われるエピソードは、「クロスファイアー」でもモチーフにされた、ある種の超能力を前提にしており、人によっては違和感を感じるかも知れない。
 著者は、このエピソードさえも、「萩谷等」という幼い人格の心の葛藤として、読者に投げかけ、考えさせる。犯人の異常性より、犠牲になった人々が抱えていた心の闇が、読後に残る快作と感じた。
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by scott_yonezawa | 2007-09-16 22:12 | 趣味(読書)